Copilot UX 強化とエージェント機能の最新トレンド in VS Code 1.109
はじめに:AI 主導の開発体験へ
Visual Studio Code(VS Code)は、2026 年 1 月リリースの version 1.109 において、GitHub Copilot を中心とした AI 連携機能をさらに進化させました。本アップデートは単なるバグ修正や UX 改善に留まらず、「AI が実際の開発パートナーとして機能する未来」を見据えた大きな布石になっています。
内容をロジックツリーで以下示します。
目的
├── VS Code 1.109 の Copilot / エージェント機能の全体像
│ ├── チャット UX の改善
│ ├── エージェント管理機能の強化
│ ├── カスタマイズと拡張性
│ └── 生産性向上のための細かな改善
主張
├── Copilot は単なる補完ではなく「開発パートナー」へ
│ ├── モデルの思考トークン可視化
│ ├── ダイアグラムや視覚的出力対応
│ └── エージェント間の協調と並列処理
根拠
├── 公式リリースノート
│ ├── チャット Streaming と UI 改善
│ ├── Agent セッション管理
│ ├── エージェントカスタマイズ
│ └── 外部モデル・Claude モデル対応
示唆
├── チーム開発と Copilot の融合
│ ├── ワークフロー自動化の可能性
│ ├── 内製ツールとの連携
│ └── 生産性指標への寄与主なアップデート内容
Copilot とエージェント体験の強化
チャット UX がより自然に
まず注目すべきは Chat UX(チャットユーザー体験) の改善です。
応答のストリーミングがより速く、モデルの推論(“thinking”)が視覚的に追えるようになり、単なるテキスト結果よりも「AI の思考プロセス」を開発者が把握しやすくなりました。この可視化は、提案内容の意図理解やデバッグ支援で効果を発揮します。
さらに、Mermaid などの 図式データをインラインでレンダリングできる機能 の追加により、説明やフロー出力が視覚的に扱えるようになった点も見逃せません。

エージェントのセッション管理と協調
Agent Session Management
AI エージェントによるタスク分担や並列処理が容易になり、複数エージェントを活用した並行作業が実質的に現実的なワークフローになりました。
これは単純な補完機能とは異なり、「プロジェクトタスク全体を AI にデリゲートする」新しい開発スタイルへの布石です。

カスタマイズと外部モデル対応
Agent Customization & Extensibility
アップデートでは、開発者自身が エージェントワークフローを定義するカスタマイズ機能も強化されました。
特定のタスクに特化したスキル・フローを設計し、チーム/組織全体で共通の AI 実行ルールとして再利用できる点は、生産性向上に直結します。
また、新たに Anthropic Claude モデルのサポート が加わり、GPT 系だけでなく外部モデル選択肢が広がったことにも注目すべき進化があります。
生産性と開発体験の質
コーディング支援の細部改善
アップデート全体を通して、インラインチャットのトリガー、モデルピッカーの説明表示、そして失敗時の自動展開など、日常的な開発体験に効く細かい改善点が多数含まれています。
さらに深掘りします↓
「応答が早くなった」の中身は“待ち時間”ではなく“体感遅延”を潰している

VS Code 1.109 の Chat UX は、単にモデルが速くなったというより、開発者が「返ってきている途中の進捗」を確実に感じられるように設計が更新されています。公式にも “streaming improvements that show progress as it happens” と明言されており、結果が完成するまでの無音時間を減らして、思考・ツール実行・返答が連続的に見える方向へ寄せています。
ここが効くのは、実務の Copilot 利用が「一問一答」ではなく「途中で軌道修正しながら前に進む」作業になってきたからです。返答が速く見えることは、体感の生産性に直結します。とくに 1.109 では、思考(thinking)とツール呼び出しの見え方が整理され、ノイズを増やさずに状況把握だけをしやすくする方向の改善が入っています。
もう一つ重要なのが「失敗したツール呼び出しの展開」です。ツールが失敗したときに自動で詳細が開く挙動が用意されていて、どこで詰まっているかを探す“二度手間”が減ります(chat.tools.autoExpandFailures)。これは速度そのものではなく、復旧までの時間を短くする改善です。
さらに、Anthropic の Claude 系モデルでは thinking tokens の表示が強化され、詳細表示かコンパクト表示かを選べるなど、進捗の見せ方をユーザー側に寄せられるようになっています(chat.thinking.style など)。ここも「返答が返るまで待つ」から「AI の動きを見ながら並走する」体験への転換点です。
加えて、インラインチャットも「邪魔にならず、必要なときに呼び出せる」方向に改修が進んでいます。エディタ内のやり取りは“思考の流れ”を切りやすいので、ここが軽くなると Copilot の常用度が上がります。
Agent Session Management の本質は「同時並行」と「途中参加」を前提にした“指揮所”化

1.109 の Agent Session Management は、VS Code を “multi-agent development のホーム”にする、というリリースの主題そのものです。ローカル、バックグラウンド、クラウドなど環境をまたいだ複数セッションを、単一のビューで扱い、必要なときに人間が途中から介入できるようにする。ここが設計思想として明確です。
まず大きいのが、チャット入力欄に「セッションタイプのピッカー」が入った点です。ここで新規セッションの開始だけでなく、進行中セッションを別のエージェント種別へ“引き継ぎ(handoff)”できます。たとえば「ローカルで計画を立てて、実装はクラウドで走らせる」といった分業が UI として支援されます。
次に、Agent Sessions view 自体の改善です。複数セッションが当たり前になると、一覧が使いにくいだけで破綻します。1.109 では、サイドバイサイド表示時のリサイズ、複数選択による一括操作、スタック表示やフィルタの改善が入っており、“複数走らせる”ための運用面が強化されています。
さらに、Command Center に「エージェント状態インジケータ」を追加し、進行中、未読、注意が必要なセッションを一目で把握できるようにしています(chat.agentsControl.enabled など)。これは地味ですが、チーム開発の現場では最重要級で、AI を並走させるほど「いま誰が何を待っているか」がボトルネックになります。
そして“並列化”を支える仕組みとして Subagents が触れられています。サブタスクを別コンテキストで走らせ、メインのコンテキストウィンドウを圧迫しない、という整理は、長い作業ほど効いてきます。大規模リポジトリでの調査・変更・テストのようなタスクは、文脈が肥大化して破綻しがちなので、ここは実装面でも設計面でも示唆が大きいところです。
クラウドエージェント側も「セッション開始時の選択肢」が増え、モデル選択やカスタムエージェント、パートナーエージェントの選択などが前に出ています。つまり VS Code のチャットは、単一の Copilot ではなく、状況に応じて“どの実行体に投げるか”を選ぶコンソールになりつつあります。
補助線として言うと、GitHub 側でも複数エージェントを束ねる Agent HQ(ミッションコントロール)的な構想が語られており、VS Code のこの方向性はその流れと整合します。
おわりに:Copilot は単なる補完ツールではない
version 1.109 は、Copilot の「コード補完」という既存イメージを大きく更新しつつ、AI と人間が協働する開発環境に向けた一段の前進を示しています。
我々のような生成 AI を活かしたソリューション提供者にとっても、こうしたプラットフォーム側の進化を理解することは、クライアント導入支援や内製化支援の上で重要です。