近年、大手企業が次々とランサムウェア攻撃の被害を受けています。アサヒグループやアスクルなどの有名企業でも、システムが停止する大きな被害が報告されています。「自分たちの会社は大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、実は規模を問わず、誰もが被害者になる可能性があるのです。

この記事では、ランサムウェアがどのように侵入するのか、そして個人の行動レベルで実践できる最も基本的な対策について、わかりやすく説明します。

ランサムウェアとは?

ランサムウェアは、コンピュータやサーバー内の重要なファイルを暗号化(使えない状態に)して、元に戻す代わりに身代金を要求する悪質なソフトウェアです。ウイルスの一種で、感染すると企業全体のシステムが動かなくなり、大きな経済的損失が発生します。

ランサムウェアはどうやって侵入するのか?

典型的な侵入経路

ランサムウェア攻撃の大多数は、外部から不正にシステムに侵入する → 内部で権限を拡大する → ファイルを暗号化するという流れで進みます。

初期段階の侵入経路としては、主に以下の3つが挙げられます:

1. メールの添付ファイルやリンク経由

不審なメールに添付されたファイルをクリックしたり、メール本文のリンクをクリックしたりすることで、ランサムウェア(またはそのダウンロード元)が実行されます。これは個人の判断で防ぐことができる最も重要なポイントです。

2. VPN機器などの脆弱性を突いた侵入

会社のシステムに脆弱性(プログラムの欠陥)がある場合、攻撃者が外部から直接侵入することがあります。これは会社側の対策が必要です。

3. Webサイトからのダウンロード経由

怪しいWebサイトからソフトウェアやファイルをダウンロードして実行することで、ランサムウェアが侵入する場合があります。

侵入後の動き

一度システム内に侵入すると、ランサムウェアは:

  • ネットワーク内に自動拡散する
  • 管理者権限を奪う
  • 重要データを窃取する(身代金交渉の材料として)
  • ファイル全体を暗号化する

このプロセスは数時間から数日かけて進むため、早期発見・対応が極めて重要です。

個人ができる最も基本的な3つの対策

ここからが、あなたが今日から実践できる、最も重要な対策です。

対策1:心当たりのないメール添付ファイルは絶対に開かない

これが最も効果的で、すぐに実行できる対策です。

危険なメール添付ファイルの特徴:

  • 送信元が不明確または疑わしい
  • 差出人が実在する企業を装っているが、メールアドレスが微妙に違う
  • 件名が過剰に緊急性を持っている(例:「至急確認ください」「未納状態の通知」)
  • 添付ファイルの拡張子が .exe.zip(パスワード付き)、.xlsm.docm など

実際のフィッシングメールの例:

  • 「請求書が届いています」という名目で、不審なファイルが添付
  • 「アカウントがロックされます」という警告文で、リンククリックを促す
  • 大手企業(Amazon、銀行など)に見せかけたメール

実践のポイント:

少しでも不審に感じたら、開かないこと。心配な場合は、同僚や管理者に確認してから開くようにしましょう。本当に重要なメールなら、別ルートで確認が来るはずです。

対策2:知らないWebサイトから勝手にファイルをダウンロード・実行しない

ブラウザで検索結果をクリックしたときや、SNSのリンク経由で、意図せずマルウェアが自動ダウンロードされることがあります。

危険なダウンロードの特徴:

  • 怪しいWebサイトからのダウンロード
  • ブラウザが「このファイルは危険です」と警告を出している
  • ダウンロードしたファイルが自動的に実行される

実践のポイント:

  • ダウンロードしたファイルは、実行前に何であるかを確認する
  • ブラウザやOSからの警告メッセージは真摯に受け取る
  • ダウンロードは信頼できるサイト(公式サイトなど)からのみ

対策3:OSやソフトウェアのアップデートを定期的に実行する(会社の指示を守る)

パソコンやスマートフォンのOSに脆弱性があると、攻撃者がそこから直接侵入することがあります。

実践のポイント:

  • アップデート通知が来たら、できるだけ早く実行する
  • 会社のシステムの場合、勝手に更新せず、IT部門の指示に従う
  • 特に重要なセキュリティパッチは優先的に適用する

会社側に求めるべき対策

個人の対策だけでは不十分です。会社(IT部門・経営層)が実施すべき対策は以下の通りです:

  • VPN機器やファイアウォールのOSを常に最新に保つ
  • セキュリティソフトの導入と更新
  • 従業員向けのセキュリティ教育
  • バックアップの定期実施(万一感染した場合の復旧に備えて)
  • アクセス権限の適切な管理(むやみに管理者権限を与えない)

ただし、現実的には大手企業でも社内調整が複雑で、アップデートが後回しになることがあります。そのため、個人の「気をつけ」がいっそう重要になっているのです。

もし感染が疑われたら

  • 社内ITサポートに直ちに報告する
  • 感染の可能性がある端末をネットワークから切り離す(他への感染拡大を防ぐ)
  • 勝手に対応せず、指示を待つ

まとめ

ランサムウェア対策の85%以上は、個人の行動意識で防ぐことができます。

特に以下の3点を守るだけでも、被害のリスクは大幅に下がります:

  1. 不審なメール添付ファイルを開かない
  2. 知らないサイトからファイルをダウンロード・実行しない
  3. OS・ソフトウェアのアップデートに応じる

「これくらい大丈夫だろう」という油断が、企業全体の被害につながります。毎日の小さな判断が、会社全体のセキュリティを守ることを忘れずに。


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